心の丸窓(68)
世界的パニック時における被害妄想的気分について

☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。

私たちは脅威に直面すると、そしてそれが強すぎるならば、理性やそれに対処する能力を失います。そして私たちの心は未熟な状態に退行します。こころの未熟な状態では人は被害的になりやすくなります。これを妄想分裂ポジションと呼びます。

しかし私たちは、通常の状態であれば大人の、理性的に考えることのできる能力を回復することができます。妄想分裂ポジションから回復できない時、人は不安で、疑い深くなり、警戒状態となり、被害妄想的気分などを感じます。

そのような状態に対する反応の仕方も人によって様々です。ある人はその状況に対して万能的に対処しようとしますが、これは軽躁状態につながるかもしれません。別の人は敵がどこか外にいて彼を攻撃しようとしていると信じるかもしれません。敵国が攻撃してきていると信じるかもしれません。あるいはスケープゴートを作ることにつながったり、デマや流言を信じやすくなります。それは私たちが今でも妄想分裂的心性を心の中に持っていて、それに支配されてしまう誘惑がいつも存在するからなのです。簡単ではないですが、私たちが自分自身に対する客観的な視点を保ち、「Stay calm and carry on (平穏を保ち、普段の生活を続けよ、という第二次大戦時にイギリス政府が出したポスターの文句)」を守ることが大切だと、私は思います。

 

(具眼 記)