心の丸窓(57)
言葉を使う

☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。

政治家と演説は切り離せないものです。各国の大統領や首相の演説には歴史に残るものがあります。強さばかりでなく、反対意見を持つ者をも納得させるようなしなやかさもあるようです。英国のチャーチルも演説巧者として知られていました。彼は難局を乗り切る時に演説の言葉を強い味方につけていたといわれています。

精神科の診療は演説とは異なりますが、言葉はとても大きな意味を持ちます。まずは、患者さんの語りに耳を傾けながら、質問や、確認をしながら進みます。そして、医師は見立てや方針、具体的な治療方法などをお伝えすることになります。そのときに、医師それぞれの工夫があります。安心を伝えることも、厳しいことを伝えなければならないこともあります。患者さんごとにちょうど良い言葉を模索することも医師の仕事の重要な要素だといえます。

そして診療は、演説とは異なって両方向のものです。患者さんからの質問や考えていること・感じていることの投げかけが欠かせません。患者さんとともに言葉を使ってしっかりと理解し、それを共有してゆきたいと私たちは思っています。

 

(風蘭 記)

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