心の丸窓(41)
治ることをめぐって

☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。

 患者さんやご家族から、治ることについて質問を受けることがしばしばあります。そうした場面で私は、「病気にかかること」と「治る」ことを併せてお話しします。

心の病気はなぜおこるのか、これは現代医学においても、わかっている病気はごく一部です。おおまかにいえば、

(A)生まれつきの脳の体質

(B)成長過程での環境による影響

(C)最近のストレスや生活・身体状況

の足し合わせによります。

例えばうつ病は、(A)+(B)+(C)によって脳のなかのセロトニンやノルアドレナリンといった物質が不足してしまった状態と考えられ、それを補正するような抗うつ剤を使います。また、 (C)の見直しも必要です。それで症状が軽くなっていったらひとまず治る方向なのですが、 (B)によって完璧主義だったり自分を責めやすい傾向があるなら、再び(C)が悪化してぶり返してしまうかもしれません。こうした場合、(B)の影響を部分的に修正することが必要となります。また(A)は入れ替えることはできませんから、(A)にみあった生活を考えることは抜かせません。

このように、病気になる前の状態に戻ることだけが目標ではなく、維持できる在り方を探るのが精神医療のとらえ方である、といえるでしょう。

 

(風蘭 記)

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