心の丸窓(64)ひとりの時間

☞「心の丸窓」は心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。

 遠くの電車の音がよく聞こえるようになると、秋がきたなと思うことがありませんか。秋は静けさを伴ってやってきます。そして、ひとりになるとその静けさをひときわ感じる季節ともいえるでしょう。
 ひとりでいることというのは、時代とともに軽視されるようになり、ネガティブなイメージさえ植え付けられてしまいました。そして、いかに人とうまくやれるか、ということばかりが評価されるようになり、求められるようになりました。しかし、孤独は創造の源とも考えられているものです。本来、ひとりでいることと、人とともに過ごすことは、車の両輪のようなもので、両方があって人の心は均衡を保てるのだといえます。
 英国の精神分析家ウィニコットは、「ひとりでいられる能力」という表現をしています。そのもとにあるのは、幼時がふたりで(=母親とともに)いるときにひとりになれる体験であるといっています。気に留めないでいられるようなつながりをもってこそ、そして母親が侵入しないでそこに居続ける時期があってこそ、やがてひとりの時間を持てるようになるのです。
 現代に生きていると、真にひとりの時間は思いのほか少ないものです。人との交わりを離れて、スマホをしまって、ネット接続も切って。そうすると、何が浮かんでくるのでしょう?

(風蘭 記)