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☞「心の丸窓」は心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。
  

 毎日私達は、何人もの仕事関係のストレスに苦しむ患者さんにお会いしています。彼らは抑うつ、不安、強迫、頭痛・腹痛・不眠あるいは吐き気といった心身症症状など、さまざまな症状を呈しています。もちろん皆さんそれぞれ、そのストレスを避けられない理由をお持ちですが、私達はときどき、患者さんに共通する考え方のパターンのようなものを見かけることがあります。

多く見られるパターンの一つが期待、要求水準の高さです。私がここで意味しているのは会社や上司からの要求や期待だけではなく、患者さんの自らに対する期待の高さのことです。例えば「私よりもっと夜遅くまで、ハードに働いている人がいっぱいいるに違いない。だから私は文句を言えない。逃げてはいけない」などと考えたりします。このような患者さんは、キャパシティオーバーだと症状が警報を鳴らしているのにも関わらず、休むことも、仕事の負荷を減らすために助けを求めることも、ときには治療に来ることさえも、状態がとても悪くなるまで躊躇します。

そういう患者さんが自分に対する期待値を下げるのがこれほど難しいのはなぜなのでしょう。その理由の一つは、負荷がキャパシティを超えているととらえることが、彼らにとっては自分の能力の限界として感じられるからではないかと私は考えています。自分の望んだように、あるいは期待したように、自分ができない、働けないということを受け入れるのは傷つくことです。そういう人たちは、助けを求めることや現在のタスクをあきらめることは「負け」、と考える傾向があります。彼らは負けることは「簡単だ」と考えたり、ときにはそう言ったりもしますが、実際は自分に限界があるということを認めるのはより難しいことなのです。

しかし患者さんが自分の限界を否認し続けている限り、その症状が改善することはないでしょう。なぜなら症状はキャパシティ超えのサインであり、つぶれてしまいそうだという警告だからです。彼らが限界を受け入れる痛みを克服することができれば、私達は困難な状況に対処するより現実的な方法を考えはじめることができます。

ときどき私は患者さんから「『負け』たら私は何を得られるのか?」と聞かれることがあります。とても難しい質問ですが私は、「自分自身と世界に対するよりバランスのとれた、より現実的な見方のできるパーソナリティに成長できる可能性」ではないかと思っています。

(具眼 記)

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