心の丸窓(21)新生活を迎えた方に〜適応障害を来さないためのちょっとしたコツについて

☞「心の丸窓」は心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。

 4月 を迎えると、新入学・進級、就職・転勤、転居など、さまざまなイベントにあふれた新生活に私たちは入って行くことになります。しかし、新しい体験をしながら、新しい生活に心身ともに適応していくことは、思いのほかたいへんな作業です。なぜなら、私たちは新生活を進めていくことと並行して、これまでの生活を
失っているからです。たとえば、新社会人であれば、学生や子供という立場を失い、異動した社会人であれば、これまでの役責や人との関わりを失います。私たちはこの時期、実は、新生活と喪失体験の両方に適応しなくてはならないのです。何かを手放したことに寂しさや悲しみを感じる一方で、何か新しいことに期待
と不安を抱きつつ、とても慌ただしく過ごしているうちに、次第に「ストレス」をため込み、疲弊していく人も少なくありません。実際この時期には、私たちの 外来に「適応障害」(心の丸窓(6)(12) )に陥っている人が多く訪れます。不安・緊張はもちろんのこと、意欲低下・抑うつ気分・不眠・さまざまな身体不調など、人によって症状は多彩で、ときに薬での治療をお勧めすることもあります。

 ここでは、このピンチを乗りきるちょっとしたコツをお話してみたいと思います。1つは、「すぐに・上手に適応することをあきらめること」です。どんな物事でも、適応していくにはそれなりの時間が必要です。たとえば、新入社員であれば、1年目から成果を上げようとすること自体に無理があります。むしろ、新入社員の最初の仕事は、「きちんと失敗すること」であって、「失敗し慣れる・怒られ慣れる・サポートされ慣れる」ことの方が重要です。2つ
目は、言うまでもなく「充分に休み、体調を整えること」です。適応が上手くいかない時、私たちはつい挽回しようと思って無理をしがちですが、これはあまり よい対処とは言えないでしょう。無理をしたからといって、必ずしも適応がはかどるわけではないのですから、むしろ、よく食べ、よく眠ることを優先してみて
はいかがでしょう。3つ目は、私たちが、何かを手放したことで傷つきながら新生活を始めたことにも目を向け、「自分の心をいたわること」です。失ってしまった大切なものへの思いがよみがえり悲しみのこみ上げる時をしばし過ごすことも、新しい生活に適応していくためには大切なプロセスなのです。

(耕雲 記)

 

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