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心の丸窓(57)言葉を使う

☞「心の丸窓」は心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。


第二次世界大戦中の英国の首相チャーチルを主人公にした映画を観ました。この作品は、日本人の特殊メイクアーティストがアカデミー賞を受賞したことで有名になりました。そちらも見事でしたが、私が目をひかれたのは、演説の原稿に対するチャーチルの取り組み方でした。毎度口述タイプを何度も直し、ラジオ放送で国民に語りかける場面では、生放送開始ぎりぎりまで悩んで言葉を練り続けていました。このあたりは史実に忠実な描写のようです。数々の難局を乗り切る時に彼は、このような演説の言葉を強い味方につけていたといわれています。

精神科の診療はもちろん演説ではありませんが、言葉はとても大きな意味を持ちます。まずは、患者さんの語りに医師は耳を傾けながら、ところどころで質問や、確認をしながら進みます。そして、医師は見立てや方針、具体的な治療方法などをお伝えすることになります。それらをどのような表現で患者さんに伝えるか、そこが医師の思案のしどころでもあります。安心を伝えることもあるし、厳しいことを伝えなければならないこともあります。患者さんに届く言葉、患者さんが受け取りやすい言葉はなんだろうと、模索することも医師の仕事の重要な要素だといえます。

そしてそのような営みは、演説とは異なって相互的なものです。患者さんから質問や考えを投げかけていただくことが欠かせません。病気や困難は形にしにくい面もあるのですが、患者さんとともに言葉を使ってしっかりと理解し、それを共有してゆきたいと私たちは思っています。

 

(風蘭 記)

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