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心の丸窓(52)夢見る力

☞「心の丸窓」は心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。
  

数年前私は、とても魅力的な名前の焼酎と出会いました。その名は、「夢見る力」。薫り高く、とても豊かな味わいでした。ところで皆さんは「夢見る力」から、どんな「力」を思い浮かべますか?私の心に浮かんだのは、将来への希望に満ちた展望をもてる力ということではなく、やはり寝ているときに夢を見る能力のことでした。

フロイトは、「夢は無意識への王道である」(夢は、無意識を理解する上での重要な手掛かりになるという意味)と述べました。その夢は、私たちの心の象徴作用によって初めて見ることが可能になります。象徴作用とは、心の中のある思いを、代理のもの(象徴)に置き換え、端的な形で表現する心の作用のことです。例えば、私たちが「ハトは平和の象徴(シンボル)」と言うとき、「平和」という複雑な概念あるいは状態を、「ハト」という穏やかな小動物になぞらえて表現しているわけですが、このある物事(平和)を適切な対象(ハト)に置き換えて表現するのが心の象徴作用です。フロイトは、その作用を通じて、無意識の心が抱いていることを夢という形に象徴化して表現していると捉えたのです。この作用は、心の丸窓(37)でも述べられたように、母親と赤ん坊の健全な相互交流の積み重ねの末に獲得されます。もしそれが十分になされない場合には、十分に象徴的な意味ある夢を見ることができなくなります。

精神療法の初回面接で患者さんが、以下のような夢を報告したとしましょう。「私は車の教習所で初めて路上に出た。とても緊張したが、隣に乗っている教官はベテランのようで、頼りになる感じだった。」そんな時私が治療者ならば、その夢を、初めて面接に臨む不安や緊張、そして治療者が頼りになる存在であってほしいという願いといった患者さんの無意識を意味するものとして理解し、そのことをお伝えするでしょう。こうした交流は、互いの象徴作用に基づくものであり、精神分析的精神療法はそうした営みの積み重ねによって豊かな実りをもたらすのです。

(MUSASHI 記)

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