心の丸窓(50)
創造と万能感

☞「心の丸窓」は心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。

旧約聖書に出てくるバベルの塔のエピソードは、キリスト教徒ではなくても多くの人が知っていることでしょう。人々が、欲望のままに天にも届く高い塔を建設しようとするのを知った神は、人々の話す言語をいくつもの種類に分けてしまったので、混乱によって塔の建設は中断してしまった、というものです。人間の傲慢を神は許さないという解釈が定説といえるでしょう。バベルの塔は宗教画の画題にも取り上げられますが、ブリューゲルの作品が日本では有名ですね。

創造には本来、健全な自己肯定感が備わっているものです。しかしその快感からやがて、何でもできると万能感を抱いてしまう危うさも人間にはあります。

精神分析では、心の中の自由ばかりでなく、自由の限界を知ることにも目を向けます。人の心は健全な自己肯定感と自己愛の肥大の間を揺れます。これは人類の課題であり、ひとりひとりの人間の課題なのです。

(風蘭 記)

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