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「心の丸窓」は心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。
  

  前回はサイコセラピーがカウンセリングと異なり、病いを抱えた方を主な治療の対象とすることを述べました。改めてそれを定義すると次のようになります。「サイコセラピーとは、訓練を受けた専門家が、精神障害、行動上の不適応その他の情緒的な問題を抱える人々との間に、熟慮されたプロフェッショナルな関係を結び、その働きかけを通して、現存する症状や問題を取り除いたり、変化させたり、和らげたりし、さらには対象者の人格の発展や成長を促すことを目的とするあらゆるタイプの処置をいう」(ウォルバーグ、1954年)。すなわちサイコセラピーとは、薬や機器を用いるのではなく、治療者(セラピスト)との対人的な交流を通じた治療法であり、しかもその治療者は十分な訓練を受けた専門家である必要があります。そしてそれぞれのサイコセラピーは基礎となる理論を持ち、熟慮された治療の設定と方法論を活用して行われねばなりません。

  サイコセラピーにはたくさんの種類がありますが、ここでは今日世界中で普遍的に行われている幾つかを簡単にご紹介しましょう。

1)行動療法:これは条件づけ療法とも言われ、実験的に確立された学習理論に基づき、不適応行動(現実的に不健全な行動)の改善を目指す方法です。つまり目で見える行動に限って治療の対象にする点が特徴です。とても単純化した表現をするならば、好ましくない行動に対しては負の強化因子(ムチ)を、好ましい行動に対しては正の強化因子(アメ)を与えることで、行動を修正していく方法と言えます。

2)認知行動療法:「認知」とは個人が自分とそれを取り巻く世界をどう見るか、どう解釈するかというその「主観的捉え方」のことです。人はみな個性的な「認知フィルター」と通して現実を捉えているわけですが、そのフィルターが色づけされたり大きく歪んでいるときに、さまざまな病的状態を招くと捉えます。認知行動療法は、この認知フィルターがどのような色づけと歪みを持つのかを見つけ出し、その修正を図ることで治療を試みようとする方法です。

3)精神分析的精神療法:人の不適応な行動や認知の歪みには、それなりの背景や理由があり、それらが生来的な気質や、生まれてから今日に至るまでに積み重ねられてきたたくさんの人間関係や経験が、複雑に織り成されながら形作られた「個性」と密接に関係していると捉えます。したがって精神分析的な治療では、単に不適応行動を変えるとか、歪んだ認知を修正することを目的とはせず、その背後の「個性」の抱える苦悩を深く共に理解していくことが目指されます。それはそれまで未整理のまま無意識の中にしまい込まれていた不安や葛藤が、意識化され深く理解されていくと、それらに由来する症状が改善していくというフロイト以来の基本的な治療機序を基礎に置くからです。

このようなそれぞれの持つ特徴をよく理解した上で、ご自分に最も適したサイコセラピーを選択するために専門家とご相談されることをお勧めします。

(カラマツ林の梟)

(注:心の杜・新宿クリニックでは、十分な訓練を受けたセラピストによる精神分析的精神療法を主な方法として臨床を行っています。)


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