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心の丸窓(34)日本における精神療法トレーニング事情

心の丸窓は、心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。


先日、全国の有志の医学生と研修医を対象に、「精神分析 医学生・研修医セミナー  2015」という研修の集いが都内で開かれました。心の杜からは私を含む医師3名が講師として登壇し、若い医師やその卵の方たちと有意義な交流の機会を持つことが出来ました。そこでは、精神分析とその臨床実践や、精神医療への活用についての基礎的な理論と技法などの講義があり、受講者は自由にディスカッションに参加しました。

実はそのような教育研修の機会は、今の日本の医学教育においては、大学でも卒後の研修施設でもほとんど提供されることがありません。これは世界的に見るととても特異な状況と言えます。欧米諸国では、すべての精神療法の基礎になる「精神分析」について十分な時間をかけて学び、その上に立って精神療法に関する研修を受けることがプログラムとして組まれています。その中には、精神分析・精神療法についての知識を身につけるためのレクチャーの受講の他、数年にわたる何例かの精神療法の臨床経験と、それに対する上級医師からの継続的個別指導(精神療法スーパービジョン)、症例検討会への参加などが含まれます。ちなみに私たちのクリニックでは、それと同等もしくはさらに専門的なトレーニングを積んだ医師が診療にあたっています。しかし日本においてはそのような研修プログラムが制度化されておらず、個人の裁量に任されているため、精神科医の多くは、精神分析や精神療法に関する研修を受ける機会もないまま臨床の現場に出ているのが実態なのです。

精神科医が最も多く所属する日本精神神経学会では現在、精神療法に関する研修を組み込んだ研修体制を急ピッチで築こうとしています。しかし、実際にそれらが機能し、薬を処方するだけでなく人の心を専門的知識に基づいて理解し、専門的スキルと心をもって診療にあたることのできる精神科医が十分に活躍するまでには、いましばらくの時間がかかりそうです。

 

(カラマツ林の梟)


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