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心の丸窓(26)月経前緊張症(月経前症候群)と心療内科・精神科:前編

☞「心の丸窓」は心の杜の医師による心の診療に関するコラムです。

 

人の心と身体は互いに深く影響を及ぼしあっていますが、女性の場合月経にまつわる現象もその例外ではありません。閉経前後に、のぼせやめまい、動悸や耳鳴などの身体症状とともに、イライラや気分の落ち込みなどの心の症状を来す更年期障害は、そのよく知られた一例です。

 

月経に関連して頻度の高いもう一つの症候に、月経前緊張症あるいは月経前症候群(premenstrual syndromePMS)と呼ばれるものがあります。個人差は大きいものの、女性であれば、月経に先立つ時期にお腹の痛みや膨満感、胸の張り、食欲亢進、眠気といった身体の変調を、多かれ少なかれ自覚するものです。それらの不調が比較的重い場合、医学的には月経前緊張症あるいは月経前症候群と呼びます。日本産科婦人科学会では「月経前3ないし10日の間続く、精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないしは消失するもの」と定義しており、成熟女性の約半数に見られると推測されています。その多くは日常生活に支障をきたすこともなく自然に回復するため治療を要しませんが、苦痛が著しく支障をきたす場合には何らかの手当てが必要となります。とりわけ情緒不安定や抑うつ気分、不安焦燥感などの精神症状が強い場合は、月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorderPMDD)と呼び、治療を必要とすることが多くなります。

 

PMSPMDDも、月経周期を調整する女性ホルモン(卵胞ホルモン、黄体ホルモン)が作用を発揮するさまざまな器官のホルモンへの感受性の違いと関係していると考えられていますが、原因や病態はまだ十分解明されていません。私たちの印象では、うつ病などの気分障害との合併は比較的多いようです。PMSそのものは本来それほど重くはなかったのに、うつ病を患ったために重症化していることもあれば、PMSが重症なため、生活のさまざまな領域で支障をきたし、結果としてうつ病の併発を招いたり、もともと患っていたうつ病を悪化させている場合もあります。さらにPMDDは近年、うつ病の一形態と位置づけられるようにもなってきました。このようにPMSPMDDは身体と心の両面から適切な見立て、理解し、対処することが求められます。次回はその対処、治療についてお話ししましょう。

 

(カラマツ林の梟)

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