心の丸窓(25)
喪った人を想うこと

☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。

 大事な人とお別れすること、つまり、大切な対象を喪うことは、心の丸窓(13)(24)にあるように、心にたいへん大きな揺さぶりを与えます。心の揺れが安全に過ぎていくためには、喪失という体験を誰かと共にすることの意義が大きいものです。

状況によっては、喪失をめぐることについて、じっと見つめたり、繰り返し思ったりすることが保留されたままで過ぎてしまうこともあります。すると、場合によっては、心の一部が強張ってしまうこともあれば、予期しない不安定がもたらされることもあります。それらは必ずしも専門的援助を必要としないかもしれません。しかし、治療を必要とする心の病にまで至ることもあります。

精神科の診療は、苦しい体験を経てどのような心の状態になっているのか、そして何が必要なのかを患者さんとともに考えていく役割を担っています。そして大切な人は喪われても、見送る人の心の中に思いがしまわれていくように、援助したいと思っています。

(風蘭 記)

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