心の丸窓(5)
仮面うつ病とは?

☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。

うつ病と言えば皆さんは、憂鬱な気分や意欲・思考力の低下といった精神的な症状をお考えでしょう。ところが、うつ病には精神的な症状だけでなく、身体のだるさ、便秘、食欲低下、体重減少、不眠、性欲低下、身体のいろいろな場所の痛みなど、身体の症状もみられることがよくあるのです。そして、身体の症状だけが患者さんに自覚され訴えられ、精神的な症状が覆い隠されてしまっているような場合を「仮面うつ病」と呼んでいます。

患者さんは身体のどこかが悪いのだと考えて、それぞれの症状を専門にする医師を受診します。でもそこで、症状に対する薬を処方されても具合は良くならず、検査をしても異常が見つかりません。こうなって初めて、患者さんは心療内科・精神科にたどり着くというわけです。

私たちは、そうした患者さんを迎えて、初診時の診察で十分にお話を聴きます。具合が悪くなった頃の生活状況、症状の一日のうちでの変動(うつ病では朝が一番不調なことが多い)、うつ病の既往、元来の性格等々。また、医師がじっくり耳を傾ける中で、実は患者さんが憂うつな気分、思考力の低下、億劫な気分などを感じていることが明らかになることもあります。治療は、通常のうつ病に準じます。

(MUSASHI 記)